午後8時40分ごろ。
予定の時間を大幅に遅れた寒空の中、私ことミッチーサンタは玄関の前で震えていた。
左手にはプレゼントの絵本。右手には良い子ノートを手に重い扉の前で待っていた。
寒さと緊張で震えが増す中、ついに私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「サンタさーーーーーん!!!!!」
これでもかというほどの大きな声に応えるように扉を開けて「ほっほっほっほっメリークリスマス!」と私は高らかに登場した。
目の前にいるのは可愛らしい双子。泣きはしなかったもののさっきまでの元気はどこえやら、緊張から黙りこくってしまった。
緊張をほぐすために言葉を投げかける。
「今日は二人ともいい子にしていたから、ここに来たんじゃよー」というと二人とも笑顔が溢れた。
続けて学校で何が1番楽しいか、頑張ってることは何か、最近できるようになったこと、言葉をかわすたび笑顔が溢れ徐々に緊張もほぐれたようで、サンタへの質問もしてくれた。
双子はあどけない声で「サンタさんは北極に住んでるって本当?」と聞いてきた。
「北極に住んでいるものもおるがワシはグリーンランドというところに住んでおるんじゃ」というと「へ〜〜」と楽しそうな顔でこちらを見ていた。
それと時を同じくして新たな質問。
「トナカイの名前全部言える?」と聞いてきた。(困ったぞ、トナカイの名前まるで考えてねー!どうする俺⁈)と思ったもののここは年寄りサンタの常套句、物忘れを装い「はて確か6頭ほどおった気がするが名前がわからんのー、年をとると物忘れがひどくなってのー」とシラを切ると、「一人ぐらい言えるでしょー!」と鋭いお言葉。
とっさに思いついた名前を言うと目を輝かせて「あとはなんていうの?」と聞いてきた。
サポートサンタさんが「ルドルフじゃない?」と助け舟を出してくれたおかげで「あーそうじゃったルドルフじゃったなー」とその場を切り抜けることができた。
最後はみんなで写真を撮ってお別れとなった。
別れの時、「まだプレゼントを届けないといけない子がたくさんおるからのー。悲しいがここでお別れじゃ」というと、少し悲しげな表情だったがその顔には会えて嬉しかったと言わんばかりの笑顔が溢れていた。
重い扉に手をかけ、外に出てもなお手を振ってくれた。私たちは「バイバーイ!!!」と精一杯の別れの言葉に応えるように力強く手を振ってその場を後にした。
エレベーターで下の階に降り、班のみんなと言葉を交わし私たちは次のお宅へ向かった。
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